掻き乱して 抉り出して 睨み付けて 火を点けて いいえ、嘘なのよ、灯が欲しかっただけ。 鮮やかだった夕映えももう、 青い影を引き擦り落として、夜空が躰に溜まるから。 ほぉらまたひとつ傷付いた。 ほぉらまたひとり逃げてった。 流れゆく、ものはみな、失…
ギャンブル(テーマ提供:クロラ) 東あれ だからそちらが東となった 赤であれ そして賽子の目は壱が出た そうして勝ち上がってきたのさ、と 彼は乾いた笑みで見下す この勝負に負けていたら おまえはいなかったのさと云う 笑い男、の飼っているサカナ、に水…
影ばかり動いている実体を持たない存在と 存在を持たない実体の差を述べなさい それは何色をしていますか? 何色を、していますか? 微睡むタナトスニヒリズム けれどもリチウムストロンチウム 私を生かすのはナトリウム どうぞ電解して下さい
白いわずらい 今日はあんなにも重く雲が垂れ込めているのに 空は果てなく白く眩しくて 君を思い出したんだ 君の白い肌や 深い闇色の目 世界に蔓延るあらゆるすべてを拒んだ唇 僕は今も 君以外に純潔なものなどないと思っているよ そして君をなぶり辱めるしか…
春鬼 (2) * 女は覚悟が良くて/私などより見事に散らかる。/心も足も曝して見せる。/彼女を散らかしたのは/私であった。/その私が目を逸らし/女が真直ぐ/見詰めるものがある。*1 春がきた。 重たい赤ん坊を 背負 ( しょ ) うように 白い薄手のシャ…
保護膜の部屋 せんせい、わたしの鉢植え、びょうきなんです 水をやっても幾度飲ませても 吐きこぼしてしまうのです 少女は自分の髪を切った 落ち続ける黒髪は艶やかで 床の木目模様を更に鮮やかに、する この部屋には水をやらなければなりません せんせい、…
ミルキーウェイ / 摩耗する / ほそく削ぎ落としてゆく / 始まり / 撃ち落とす宵の明星 / 流れ星の軌道を計算 / すぐに示唆 / 或は監査 / トゥ イット トゥ イット ソー ゴナヘッド!/ 歩き出す椅子 / 挙動不審な映写機 / 繊細に触れる仙人掌 / そして始まる…
白い花 ちらちらとミズキが 絶え間なく散っていく その傍から白い花びらは蝶になり ひらひらと羽ばたいていく 道端の白い花を集めて 君に会いに行こう 柔らかな風吹く部屋の中 君が静かに息をしている 花束でそうっとその頬を撫ぜれば 花がほうっと色づいた …
立ち枯れ、後 それが、やさしいはずはない 水を浴びせられる植木のように つんと上を向いて待っている少女 断ち切られる黒い髪は むなしく踊るように落ちる 床とは、 ただあたりまえの木目 その上に生卵を置く 殻を割って中身を置いた 黄身と白身がとろんと…
魚たちも 泳ぎ手たちも 船も/水のかたちを変える。/水はやさしくて 動かない/触れてくるもののためにしか。 (ポール・エリュアール「魚」より、安藤元雄訳) とても長かった旅行からしばらくぶりに戻り、実家に立ち寄る。家には誰もいないようで、お腹が…
無自覚な理論 / 不正確な夢 / 痛む古傷 / 微笑む三日月 深爪しても/ 三日月 / チェシャ猫の笑い / その形は三日月
曇りの部屋 やさしくして ねえ、やさしくしてください 切ってください わたしの髪を切ってください あなたの髪を切らせてください 茹で卵を作って、わたしに運んでくれますか 灰色の雲はいつからこの部屋のうえに 藍色の隘路にまつわるアイロニィは ねえ、と…
白い、 真夜中 色温度の低い蛍光灯の下 嘔吐く 偽物の明るさの中 肺から込み上げるのは白い何かばかりで 私はうまく考えられない (昔から 白 は嫌いだった) 透き通れない悲しみが 白濁したエゴが それでも何か もっと素敵なものになりたくて 私の肺を灼い…
幽鬼 ユウキ―― 彼女はつつましく ゆがんでいく カレンダーの確かな進みを 阻害するだろう (――今日が何曜日か分からない…) 性急にふしだらで 明瞭なコトバのように アップテンポで 二人の髪をすりつぶす愛 (――羅生門の老婆のように…) 彼女との日々は 公共…
柑橘類の写真、ありがとうございました。オレンジだとか種類を特定しても良いかも知れないのだけど、ただ象徴的な柑橘類、と思う写真ですね。 この前チェコも写真を撮りにいきました。桜は散りかけで花びらが風にのって吹き付けました。風は冷たいのに桜は温…
ぼくは友だちに言う/すばらしいことはみんな夢の中で起った/ぼくらはそれを思い出せないで暮らしている/一篇の詩/ぼくらの苦しみでは創り出せない詩/それを思い出そうとしてぼくは歩いている/ぼくの沈黙を許したまえ と (辻征夫「沈黙」より) 蕎麦屋…
霊花宴 花見客の一群がよい心地になって唄を歌っている そこから遠く外れて離れ 川べりの道を永く永く歩いた 水が空を映す 春の空を映す やわらかな薄紅色の花弁が流れゆく 溺れもせずに 溺れもせずに何処までも 流れゆく 川べりの道は春の重箱 桜はまるで干…
春鬼 (テーマ提出:泉由良) ※1 願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ ----- ※2 そのとき 人類は虫になってしまったそうだ ひとりの人の脳の中で (もはやそのように思うのは心ではなく脳であろう) ----- いつかの四月のお花見の頃 例えば…
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。交換日記は小学生以来なもので、ちょっとうきうきしているわたしです。 レモン哀歌、懐かしいですね。高校の国語の教科書に載っていました。せつなくも美しい、純愛。みずみずしい文章も、とても好き。「トパアズい…
日記の始まりは私からです。これからよろしくお願いします。 私の名前はチェコとしておきます。何故かというと、これから私はあなたに色々なお願いをしようとしているにあたって、2009年の高村智恵子のようになりたいと思うのです。といって伝わるのかな? …
ぼくの夢は普通戯画的な秩序に従っているとぼくは言った。夢はぼくを告発する。ぼくの性質にあって修正不能なものをぼくに教えてくれる。ぼくの改めようとしない体質的欠陥を強調してくる。それはぼくもうすうす感じていたものだ。夢は、行動や寓話や談話の…
あいをたべましょう おなかいっぱいに そうすれば 楽になりますよ なんて そんなの嘘っぱち 詩集 スカイツリー 待子あかね・著(白昼社) A6版 600円 詩11篇収録 ハッピーなんて かっこつけてるみたいだ あおい木 あおい木 「風船のようにフワフワ浮遊し、時…
「──サカナのはなしをしてよ」 貴女がそう、云ったから。 「サカナのはなし」泉由良(白昼社文庫) 2007年8月上梓。短篇小説5本+詩3本。A6版、インクジェットプリント。
盃をあげよ、グラースよ、硝子をして 注がれるヴォトカを受け止めよ その透明なる熱い液体に、夜を閉じ込めよ そして飲み干せ 一気に飲み干せ 「vodka、その周辺」泉由良 著(白昼社文庫) 「ゆらさんに畏れをいだきました。もう、憧れとかではなくて、本当…
──誰かが親切にも四次元立体羅針盤をくれた 「夜空に釦」泉由良(白昼社文庫) 2007年4月にホチキス綴じで「白昼社文庫no.01」として発行。 2009年中村ビル大作戦の際に限定再発行。残少。A6版、横書き。500円。 収録詩 「猫」「光」「降ってくる、色」「美…
「夏の前、子どもの紹介」 泉由良・著 1999年執筆/2004年新風舎文庫より上梓夏の前、子どもの集会 (新風舎文庫)作者: 泉由良出版社/メーカー: 新風舎発売日: 2004/09メディア: 文庫 クリック: 45回この商品を含むブログ (6件) を見る新風舎倒産後もamazonに…